シリーズ : ニュース : メディアリテラシー

6・27にあたってーーあらためて、ネットメディアの信頼をともに

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JIMAリテラシー部会からのメッセージ

今日6月27日は、松本サリン事件の地元テレビ局が提唱した「メディアリテラシーの日」です。今から28年前の今日、オウム真理教の信者たちが引き起こしたこの事件では、当初9ヶ月にもわたって発生現場の直近に住む無実の会社員K氏が犯人かのように疑われ、断言を避けつつ疑惑を煽るような曖昧な(あるいは誤った)情報が、様々なメディアで繰り返し流されました。

この結果、K氏はサリンガス中毒と言う一次被害に加えて、義憤に駆られ正義感に燃えた世間の人々からの苛烈なバッシングという深刻な二次被害を被ることになりました。

【JIMA加盟団体の皆さん】

当時、まだインターネットは今とは比較にならないほど普及していませんでした。ほとんどの非難や断罪、嫌がらせ、誹謗中傷は、手紙・ファックス・電話といった手間のかかる方法で、それでもK氏のもとに押し寄せました。

あの事件が、今の世で起きたら? [K氏≒クロ]情報は、根拠薄弱でも容易にPVを稼げるでしょう。私たちネットメディアは、そんな情報を発信する誘惑に抗い、冷静な報道に踏み留まれる、と断言できるでしょうか。SNSによるK氏吊し上げの火に油を注ぐような情報提供をしない、“仕組み”や“社員教育”(単なる“決意”ではなく)は万全でしょうか。

ネットメディアの信頼性は、そうした局面でこそ試される。私たちJIMAはそう考え、設立当初からメディアリテラシー部会を設けて、《発信者責任》の自覚と実行をより確かなものにすべく努力を重ねています。これからも定期的な勉強会や提言、実践等に、ぜひ共に取り組んでいきましょう。

【広くネットユーザーの皆さん】

松本サリン事件は、遠い昔話でしょうか。コロナ禍の中で駆け巡った「トイレットペーパーが無くなる」という噂に、不承不承付き合ってデマの実現に加勢してしまった日。ウクライナの戦火と共に飛び交う真偽不詳の情報戦の中で、見極め方に戸惑い途方に暮れた日。それはつい最近や、あるいは今日や明日のことではありませんか。

ネットメディアやSNSの受け手でも送り手でもある、私たち。その1人1人が、メディアリテラシーの能力を磨いて〝情報災害〟の減災に努めること。そのために、JIMAメディアリテラシー部会はこれからも己の責任を深く自覚し、非会員の皆様向けにも色々な講座や対話の場をご用意してまいります。インターネットを、私たちの思い込みや分断を[固める]道具ではなく[壊す]道具にするために、あなたも奮ってご参加下さい!

筆者:下村 健一 (令和メディア研究所 主宰) 

撮影:ATZSHI HIRATZKA

1960年生まれ。東京大学法学部政治コース卒。TBS報道局アナ、フリーキャスター計25年を経て、官邸にて内閣審議官等を2年半。慶應義塾大学特別招聘教授などを満了後、白鴎大学特任教授。光村図書の小学校5年の国語教科書に「想像力のスイッチを入れよう」を執筆している。これまで、小学校~大学、企業などで、数百回のメディアリテラシー授業を行ってきた。インターネットメディア協会(JIMA)設立時理事で、リテラシー部会担当。