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Internet Media Awards 2026 : 【成年後見の闇】江東区の97歳女性を警察官や区職員が「連れ去り」…なにが起きているのか、大久保区長は会見でどう答えたのか

投稿日:
選考委員特別賞

選考委員が特筆すべきとした作品

【成年後見の闇】江東区の97歳女性を警察官や区職員が「連れ去り」…なにが起きているのか、大久保区長は会見でどう答えたのか

生の映像と音声だけが持つ力を、あらためて示した作品

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受賞コメント

SlowNews・宮本友介/フロントラインプレス・西岡千史

この度の受賞は青天の霹靂ではありますが、制作チーム一同を代表して御礼申し上げます。
私は番組制作プロダクション、そしてフリーを経て、2025年頭よりスローニュースに加わりました。それまでは太平洋戦争における国内戦争被害のオーラルヒストリー収集、被災地支援、偽・誤情報に係るコンテンツ制作をしてきましたが、”インターネットメディアでの調査報道”という分野の中で、果たして己の責務を果たすことは叶うのかと自問する日々を過ごしています。ですが戦災であろうと、災害であろうと、そして偽・誤情報の最中であろうと、どこにでも。そこには必ず弱い立場に追われる人びとがいます。彼ら彼女らにメディアはどのような眼差しを向けるべきなのか、市民が見つめたり手を差し伸べたりするきっかけには何が必要なのか。自治体により連れ去られてしまった武田和子さんとそのご家族に対しても、我々ができることは通底し、不変であり、この動画コンテンツが受賞したということであれば、取材をした私自身勇気をいただけることだと感じ入っています。
調査報道のイロハを親身に説いてくださるメンターたるプロデューサーの熊田氏、今回、共に取材してくださったフロントラインプレス西岡氏にも厚く御礼申し上げます。
(宮本 友介/SlowNews 映像ディレクター)

このたびは栄誉ある賞をいただき、大変光栄です……と言いたいところですが、残念ながら、私にはその言葉を申し上げる資格はありません。
2024 年から本格的に取材を始めた「自治体による高齢者の連れ去り事件」は、確認できているだけで全国で 20 件以上発生しています。そのうち、無事に戻ってくることができた高齢者はわずかで、なかには亡くなってからようやく再会できた家族もいます。被害者や家族が今も絶望の日々を過ごしているなかで、私自身も自らの無力さを痛感しています。
裁判所や警察は、行政機関が相手だとなかなか動いてくれません。弁護士の協力者もほとんどいません。「これからどうすればいいのでしょうか」と、私のもとには毎日のように被害者家族から連絡が入りますが、私は的確に答えることができずにいます。
しかし、絶望的な状況でも残っている希望が一つだけあります。それは、このような事実が全国各地で発生していることをもっと多くの人に知ってもらい、法制度の改善を求める声が高まることです。
今回の受賞が、そのきっかけになることを願っています。
(西岡 千史/フリーランス記者)

・宮本 友介(みやもと・ゆうすけ)/SlowNews 映像ディレクター
2007-2014よりNHK戦争証言アーカイブス・東日本アーカイブスに参加。2015年より番組制作プロダクションにてNHKエンタープライズ制作の大型番組、独立後もYahoo!ニュース 『未来に残す 戦争の記憶』でディレクターを担当。その他劇画漫画家新里堅進マネジメントスタッフ。2025年よりSlowNewsに映像ディレクターとして参加。

・西岡 千史(にしおか・ゆきふみ)/フリーランス記者
1979 年、高知県生まれ。「THE JOURNAL」「週刊朝日」「AERA dot.」編集部などを経て、フリーランス記者に。自治体による高齢者連れ去り問題はスローニュースで掲載している。調査報道グループ「フロントラインプレス」所属。

選考委員より

近年のネットメディアでは、AIなどの技術を駆使し、ビジュアル&オーディオの可能性を最大限に拡張しようとする作品が数多く生まれている。本作は、その対極に位置する記事だ。すなわち、生の映像と音声だけが持つ力を、あらためて示した点に大きな価値がある。
とりわけ印象的なのは、冒頭の会話の録音と、何も答えないことを目的とした区長の記者会見の映像だ。認知症と判断された高齢者が、保護の名の下に公的権力によって財産権も自由も家族も尊厳も奪われ得る――現行制度の理不尽さが、テロップや解説を読まずとも、映像そのものの力によって静かに、しかし強く訴えかけてくる。まさに報道の原点を見る思いだ。
さらに本作の秀逸さは、その未加工の素材をもとに、見る者の怒りや正義感、倫理観を揺さぶる編集の巧みさにもあった。実際、本番組を契機に成年後見制度の問題は広く社会に知られることとなり、高齢者福祉政策の見直しの議論も始まったという。
オールドメディアが手放しつつある「第四の権力」としてのメディアの役割を、ネットメディアが改めて担いうることを示した点において、本作は象徴的な意義を持つのではないか。その初心に戻るとも言える期待を込めて、本編に選考委員特別賞を贈りたい。
(干場 弓子 /(株)BOW&PARTNERS 代表、(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン共同創業者・前社長)