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Internet Media Awards 2026 : 増殖するミャンマー特殊詐欺拠点 国境沿いの「監獄」、3つの特徴

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ビジュアル&オーディオコンテンツ部門

視聴体験を通じて深い理解や共感、行動のきっかけを生み出した作品

増殖するミャンマー特殊詐欺拠点 国境沿いの「監獄」、3つの特徴

効果的な視覚化により、ネットの不可視の部分を可視化する試み

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受賞コメント

日本経済新聞社 編集 電子版編集センター 戦略コンテンツグループ Visual Investigationチーム

この度は栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。

「Visual Investigationチーム」が中心となり、ミャンマーの特殊詐欺拠点の調査記事を手掛けました。2025年に日本人高校生が保護されたミャンマーとタイの国境沿いを衛星画像などで分析し、犯罪拠点が拡大していることを明らかにしました。東・東南アジアの詐欺被害額は2023年に数百億ドルとも推計されています。

今回の記事では、視覚的な証拠を収集・分析する「Visual Investigation」の手法を駆使し、立ち入りが難しい地域の状況を調べました。SNSに投稿された映像をもとに詐欺拠点内にある見張り台やフェンスを特定し、労働者を逃さない「監獄」の構造であることを示しました。

混迷を深める世界で真実に迫る手法として、オープンソース分析の重要性は増しています。海外メディアは専属組織と職種を設け、近年力を入れる分野です。私たちのチームは結成から1年を迎えました。この度の受賞を励みに、今後も日本のデジタルジャーナリズムのさらなる発展に貢献していきたいと思います。取材にご協力いただいた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

日本経済新聞社 編集 電子版編集センター 戦略コンテンツグループ Visual Investigationチーム
Visual Investigationチームは、SNS映像や衛星画像、公的書類などの視覚的な証拠を収集・分析し、事実を明らかにする調査を手掛けています。従来の取材、公開情報(オープンソース)、デジタル技術による分析を組み合わせて、ニュースを掘り下げています。立ち入りが困難な場所やネット空間も取材対象となります。

選考委員より

闇バイトの勧誘に迂闊にも乗ってしまった日本の高校生が、ミャンマー国境地帯の犯罪拠点で保護され、後に詐欺容疑で逮捕されたというニュースは、驚きを以て受け止められた。日本経済新聞のこの「Visual Investigation」というプロジェクトは、ソーシャルメディアの写真や衛星写真など、身近な情報を取材によって裏づけつつ、記事化する点に特徴があり、本事件の報道に於いても、その視覚化の方法が効果的だった。ネットの不可視の部分をこうして可視化する試みは、犯罪の背景を知る上でも、また今後の犯罪抑止に於いても有意義である。漠然と概要を知っていたニュースだったが、記事には背筋が凍るような生々しさがあった。
(平野 啓一郎/小説家)

ビジュアル&オーディオコンテンツ部門において何を評価軸とするのか。インターネットコンテンツの特性としてまず挙げられるのは、ユーザーがマウス操作で画像を動かしたり、検索によって必要な情報を取り出したりできる双方向性だろう。本作品にもそうした要素は見られる。しかし本作がとりわけ優れていたのは、それ以上に、映像そのものが持つリアリティによって、見る者に強い衝撃を与え、問題への関心と行動を喚起するという、ビジュアル表現の本質的な力を最大限に引き出している点だ。 題材自体はテレビでも扱い得たはずだ。しかし、実際にはトライしたのはネットメディアだった。潜入して映像を記録することには大きなリスクが伴う。その危険を引き受けた取材だからこそ、生まれたのが、この圧倒的な迫力と説得力ではなかろうか。 脱出に成功したという日本人高校生二人は、そもそもなぜこのような場所に連れて行かれることになったのか。その背景を想像すると、背筋が震える。本作は、犯罪集団の本丸の追及であると同時に、軽い気持ちで犯罪に関わってしまう若者たちへの警鐘という意味でも、 報道が社会に果たすべき役割を強く示している。 インターネット時代の報道が持ちうる力と責任の双方を明確に示した作品として、本作をビジュアル&オーディオコンテンツ部門大賞にふさわしい作品として称えたい。
(干場 弓子 /(株)BOW&PARTNERS 代表、(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン共同創業者・前社長)