JIMAの活動

JIMA会員限定・非公開セミナーが開催——第1回は「メディアは“炎上”にどう立ち向かうべき?」

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2019年8月28日、東京・渋谷にてインターネットメディア協会(JIMA)主催セミナー「ネットメディアは炎上にどう立ち向かうべき?」が開催されました。JIMA会員限定・非公開セミナーで、今回が第1回目の開催でした。
会員限定・非公開セミナーは、JIMA会員が自らの知見・経験を会員間で共有したり、専門家を招いて業界課題を深く掘り下げるなどの「勉強会」を目的とし、隔月で開催します(原則受講料無料)。
今回のテーマは「メディアにおける炎上」でした。講師には、外部専門家として、アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ピースオブケイク noteプロデューサーでブロガーの徳力基彦さん、会員から、東洋経済オンライン編集長でJIMA理事の武政秀明さんが登壇、炎上をめぐる現況や、自社での経験で得た教訓などを共有しました。お二人の講演の後も、講師と会員、会員間で熱のこもった討議が続きました。
本稿では、非公開部分は省いた上で概要をご紹介するものです。(事務局)

2010年以降急激に増えた「炎上」、その理由は?

総務省が発表した平成27年度版「情報通信白書」によると、ネットでの発言や投稿に対して非難が集中する、いわゆる「炎上」に関する報道は2010年ごろから顕著に増加しているそうです。

なぜこうした炎上が増えているのか。前出の「情報通信白書」では、TwitterやFacebookのようなSNSが持つ「共有」「拡散」機能が、炎上を後押ししていると見ています。

東洋経済オンライン編集長/インターネットメディア協会理事 武政秀明さん

この点を武政さんはさらに掘り下げ、「従来なら表に出ることがなかった、個人同士の他意のない会話、ふざけ合い、個人の感想までが、SNSを通じて広く外に出るようになったため」といいます。また徳力さんは、企業や著名人の投稿が炎上する背景として、「『これはけしからん』という正義感から始まる」という見解を示しています。

炎上に対し、メディアはどう立ち向かうか

こうした炎上は、メディアにとって決して対岸の火事ではありません。たとえば東洋経済オンラインでも、「過去に、タバコ休憩の是非や、記者会見報道のあり方を考える記事を出した時、『喫煙厨やマスゴミを擁護するのか』と批判を浴びて炎上したことがある」(武政さん)と打ち明けます。

それに炎上するのはネットメディアだけに限りません。『新潮45』や『週刊SPA!』などの紙媒体が、記事をきっかけに休刊・謝罪に至ったのも、ネット上の炎上がきっかけでした。
もちろん、炎上した記事がすべて悪いわけではありません。武政さんは「伝え方には気をつけつつも、覚悟を持って問題提起することがメディアに求められている役割」と強調します。
差別や社会的分断を助長したり、ハラスメントに該当するテーマを設定したりすることは論外ですが、記事の主旨には問題がなくても、表現の一部がその文脈から離れて拡散し、炎上につながるケースもあります。その現状を、メディアは十分に認識する必要があります。

アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ピースオブケイク noteプロデューサー/ブロガー 徳力基彦さん

また、メディアと炎上の関わりについては、自社メディアがその対象となるだけでなく、「すでに起きている炎上を助長する」こともあります。徳力さんは、「『ネットでこんな炎上案件がある』という事実だけでなく、謝罪があるとそれがまたニュースネタとなり、これがきっかけで炎上そのものがより広がってしまうケースが散見される」と語ります。テレビのワイドショー番組でネット炎上が取り上げられれば、非ネットユーザーでも、それまで知らなかった炎上案件を知ることになり、文字通り「火に油を注ぐ」ような報道となるわけです。

こうした炎上に対し、メディアはどのように対応すれば良いのか。

セミナーでは、武政さんは、一人の記者や編集者の独断に陥らず、複数の視点からより良い記事作りをしていく必要があると指摘。また、独自にまとめた「炎上を誘発する10の要因」(非公開)を共有し、それぞれに対して具体的にどのように対応しているかを述べ、議論が活発化しました。

また徳力さんからは、「メディアの役割は、社会に対する『問題提起』もあると思う。炎上を恐れるのではなく、本当に問いかけたい社会課題を上手に切り取り、提示していくことも必要」との指摘がありました。

さまざまなメディアや識者が集まるJIMA

報道の現場やメディアにとって、「炎上」は自らに起こり得る事案でもあり、それ自体がニュース素材になるという側面もあります。社会問題提起というメディアとしての役割を果たしたがために、それが思わぬ“議論”を呼び、炎上につながるというケースもあります。そのほか、内容の誤解や誤認、クレームなど、炎上を呼ぶ要因を数え上げればきりがありません。

そしてこうした「炎上」そのものに対し、どう対応すべきかはケースバイケースです。謝罪だけが正しい対応ではなく、かといって無対応を決め込むのが正解とは限りません。

メディアを取り巻くこうしたさまざまな課題を共有し、自社の対応ノウハウや知見を交換し合う場もJIMAの重要な使命です。懇親会では、今回の議論を先導した徳力さん、武政さんを中心に、メディア業界の識者やネットメディアの著名編集長も多数参加し、メディアの今後について語り合いました。

セミナー終了後の懇親会でも、会員間での議論や交流が続きました

次回のセミナーでは、海外での動向などを報告し、メディアが直面しているさまざまな課題を取り扱い、より良いメディア運営に向けてメディア自身がなすべき課題などについて議論を進めていく予定です。同じ課題を抱えるメディア各位のJIMAへの参加をお待ちしています。

(文責:JIMA事務局/撮影:オオモトケンジ)