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今求められる「信頼とエンゲージメント」とは 〜[JIMA協力開催] オンラインニュースをめぐる年次総会(ONA19)報告会レポート

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2019年10月18日に、インターネットメディア協会(JIMA)協力・ONA Japan主催で、Online News Association(ONA)の年次総会 「ONA19」の報告会が東京・港区グーグル社イベントスペースで開催されました
ONAは、記事中の紹介にもあるように、20年の歴史を誇るオンラインジャーナリズム(デジタルメディア)をめぐる世界最大規模の非営利団体です。報告会では、米国で9月に開催されたONA19に参加した登壇者らによるプレゼンテーション、パネルディスカッション、さらには懇親会を通じて活発な議論や交流が行われました
(協力:インターネットメディア協会、Google ニュースイニシアティブ、株式会社Spectee)
会場には、デジタルメディア関係者ら合計100人以上が集い、熱量溢れる形で交流、ネットワーキングが繰り広げられました。本稿では、報告会の概要をご紹介いたします。(JIMA事務局)

ONA19で最も話題となった「信頼とエンゲージメント」

冒頭、主催団体のONA Japan オーガナイザーであり、JIMA理事でもある古田大輔氏(ジャーナリスト・メディアコラボ代表)より、ONAについて、そしてONA19の概要が紹介されました。
ONAとは、アメリカで1999年に設立された非営利団体で、当時新しく出現したデジタル時代におけるジャーナリズムという未知の世界に取り組むために、知見を共有し、仲間を求めるために作られた団体であることが紹介されました。

今年で20周年を迎えるONAの総会には編集者、プロダクトやビジネスの担当者、エンジニア、研究者など、幅広いバックグラウンドのプロフェッショナル約2,800人が集い、3日間の予定で160もの分科会が行われたそうです。
カンファレンスを通じて何度となく話題に上った言葉は、今回の報告会のタイトルにも掲げた「信頼とエンゲージメント」であると古田氏は述べ、その後の各登壇者からは、ONA19に参加しての所感、印象的な事例などが幅広く紹介されました。

メディアの「信頼」のための6つのポイント

桜美林大学リベラルアーツ学群教授 / ジャーナリストである平和博氏は、「メディアの信頼」についてのセッションから得た、以下のような6つのポイントを会場参加者に紹介しました。
一見当たり前に見えるようなポイントであっても、「メディアに置き去りにされた人々」の存在、「ブラックボックス化してしまっている編集プロセス」というような2016年の大統領選の際に露呈した数々の問題点を振り返り、メディアが信頼を得るための基本的な姿勢の大切さを強く訴えかけました。

メディアの「信頼」のための6つのポイント

  • 「人々に信頼されない理由を理解する」
  • 「コミュニティをニュースづくりのプロセスに招待する」
  • 「人々が何を必要としているかを問いかける」
  • 「社会と向き合う」
  • 「これまで取り上げてこなかった場所に出向く」
  • 「それらの効果を評価する」

ゲーム有料購読課金モデルの成功はユーザーエンゲージメントにある

加藤小也香氏(スローニュース プロジェクトマネージャ)からは、調査報道などを支えるための「メディアのマネタイズ」という視点で様々な事例が紹介されました。
加藤氏が現地で印象深く感じた点として挙げたのは、有料購読課金(サブスクリプション)か広告か、というビジネスモデルに関し、既にサブスクは当たり前のように受け入れられて議論が行われていたことです。
広告モデルと課金モデルはゼロサムゲームではなく、全く別なビジネスと捉えて設計する必要がある。単にユーザーの閲読ページ数や時間を増やすのではなく、いかに強く特別な関係性(エンゲージメント)を築き、離脱しがたくするか。その点を踏まえてビジネスを作っていきましょう、という視点が広く共有されていることが紹介されました。

編集とデジタルの円滑な共同作業のために

寺記夫氏(FNN.jpプライムオンライン プロダクトマネジャー)からは、オンラインニュース運営の現場に身を置く立場から、コンテンツをPDCAサイクルの中でどのように機能させるかという点について数多くの実践的な学びが共有されました。
事例として紹介されたのはワシントン・ポストのニュースルームの中で、PDCAサイクルを回すことに特化した「オーディエンス・エディター」という専門家が存在し、読者とのエンゲージメントを高めるための戦略・実践が日々行われているという点でした。

また、ABCニュースのSEOマネージャーによるセッションから得た「検索経由で訪れたユーザーは、内容を3秒で知りたい」という洞察を日々の業務に活かした体験談が紹介されました。
最終的に、編集とデジタル担当者の円滑な共同作業のためには、たたき台としてのフレームワークがあることが必要である、という点が強調されました。

AI for Bad and Good

矢崎裕一氏(データ・ビジュアライゼーション実務家)からは、データやデジタル化が人や社会にもたらす影響についての興味・関心を寄せている視点から、「AI for Bad and Good」と題して、高度化するディープフェイクなどの現状、分析、対策、AIを活用したポジティブな活用事例やツールなどが紹介されました。

同じような課題を共有する仲間同士の議論、交流の機会として

報告会では、プレゼンテーションとパネルディスカッションに続き質疑応答が行われ、その後会場を別室に移しての懇親会も行われ、熱量溢れる中で議論、交流が続きました。

プレゼンテーションの中で寺氏が述べていたように、ONAの会場では5〜10人程度の少人数で議論するテーブルセッションの機会が数多くあり、そうした交流の機会を通じて純粋にオンラインメディア、ジャーナリズムをよいものにしていこうとしている人に出会い、刺激を受けたとの感想が紹介されていました。

今回東京で行われた報告会においても、多様なバックグラウンド、所属の方がフラットな立場で出会い、交流、議論する姿が数多く見られました。「信頼とエンゲージメント」を読者から得るため、米国においても手探りが続く状況の中、国内においても同じ志を持つ仲間同士の議論や交流の場の重要性が感じられる機会となりました。

ONA Japanは今後も月に1回を目処にこうしたイベントを継続的に開催していく予定とのことです。
JIMAでも、独自のイベントを開催していく予定です(次回は、12月2日に実名報道をめぐって会員限定のセミナーを開催予定)。メディア関係者のみなさまのJIMAへのご参加をお待ちしています。

(文責 / 撮影:JIMA事務局)


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