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Internet Media Awards 2024 : 虚飾のユニコーン ——線虫がん検査の闇

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テキスト・コンテンツ部門

真実を伝え、人々の心を動かした作品

虚飾のユニコーン ——線虫がん検査の闇

取り上げた問題の深刻さと、調査手法の手堅さとのバランスに優れた作品

受賞コメント

NewsPicks

かねて医療関係者の間で疑問の声が上がっていたユニコーン企業によるがん検査サービスについて、編集部内で初めて立ち上げた調査報道取材班のメンバーである花谷美枝記者、中居広起記者、洪由姫記者と共に取材を深めていきました。元社員をはじめとする多くの関係者や社長を含む企業本体への取材、論文などの公開情報の分析によって疑惑の真相に少しずつ迫っていったのですが、その過程ではさまざまな困難もありました。その都度、乗り越えることができたのは、勇気をもって証言してくださった方々の思いに支えられたからです。趣向を凝らしたバナーや分かりやすい図版といった、NewsPicksが誇るデザイン力を駆使したコンテンツでもあります。 今後に向けて大きな励みになる賞に選んでいただき、ありがとうございました。

須田桃子(すだ・ももこ)NewsPicks編集部
毎日新聞社で、科学、医療、科学技術行政などを取材し、2020年にNewsPicks入社。副編集長を経て2023年秋から編集委員。『捏造の科学者 STAP細胞事件』(2014年)で大宅壮一ノンフィクション賞、科学ジャーナリスト大賞。共著『誰が科学を殺すのか』(2019年)で科学ジャーナリスト賞。

選考委員より

「虚飾のユニコーン/News Picks」は、取り上げた問題の深刻さと、調査手法の手堅さとのバランスに於いて、候補となった記事中でも、群を抜いていた。新型コロナウイルスのパンデミックによって、私たちの社会は改めて、専門知識を一般市民がいかに適切に共有するか、という課題と直面することとなった。科学技術の進歩は目覚ましく、その十分な理解なしには、民主主義そのものが機能不全に陥ってしまう。政府に何を求めるべきか、判断できなくなってしまうからである。そこに更にビジネスが自己目的的に関与してくれば、混乱は必至である。その意味では、ほとんど悪夢のような事件の告発だった。コメント付きの記事紹介というNewsPicks独特の仕組みは、議論もあるが、今回は多くの専門家の有意義な知見が集められ、うまく機能した事例だったと評価した。
(平野啓一郎/小説家)